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29才の高校教師です。学校、教育、高校野球について日々の思いを書きます。

第100回、2018年夏の甲子園ベストゲーム〜金足農業vs日大三

こんばんは、フサイチです。

 

今日は「2018夏ベストゲーム、日大三vs金足農業」というテーマで書きたいと思います。

 

幾多の名勝負を生んだ2018夏の甲子園、第100回大会ですが、

その中で最も暑かった試合は、おそらくこの試合でした。

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毎日新聞より転載



1、譲れない決勝への切符

「金農旋風」で名門を次々に撃破し、秋田県勢初の決勝をかけた金足農業

歴史を紐解くと、

1984夏の甲子園準決勝、快進撃を続け「金農旋風」を巻き起こし、

桑田、清原のKKコンビを擁するPL学園に挑んだのも金足農業でした。

1点リードの8回裏、清原を四球で出し、

続く桑田に逆転ツーラン本塁打を打たれ決勝進出の夢を絶たれました。

あの夏から34年、「金農旋風」再び。

地元秋田の思いを胸に、準決勝に臨みました。

 

対する西東京代表日大三高、2011年に吉永、横尾、高山らを擁し、

全国制覇を成し遂げて以来の決勝進出を目指しました。

この大会はここまで接戦を制し、勝ち進んできました。

3番の日置航を中心とした強力打線と、ハイレベルな投手陣、

何より終盤で試合をひっくり返す気迫と粘り強さ、

全国で一番長い夏をかけて、準決勝に臨みました。

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朝日新聞より転載

2、流れを変えた二年生のリリーフ

試合は秋田県民の期待を背負った、金足農業のペースで進みます。

初回に二死二塁から4番打川のレフト前ヒットで先制、

5回には同じく二死二塁から5番大友のセンター前ヒットで追加点、

いずれも出塁したランナーを送りバントで進める、

伝統の金農野球で得点を重ねます。

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朝日新聞より転載

一方、吉田輝星は初回からアクセル全開、

ランナーを背負っても、粘りの投球で日大三に得点を与えません。

2−0金足農業リードのまま、試合は終盤に入ります。

 

金足農業は8回、8番菊池の二塁打、9番斎藤の四球で、

一死一二塁のチャンスを迎えます。

ここで日大三はここまで好投の河村を諦め、

本格派の二年生右腕、井上広輝(現西武)を投入します。

井上はリリーフ直後にセンター前ヒットを打たれ、一死満塁とされます。

しかし、相手のスクイズ失敗後、2番佐々木を打ち取り、

この絶体絶命のピンチを無失点で切り抜けます。

この井上の好リリーフが、日大三に流れを呼びます。

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毎日新聞より転載

3、驚異の粘り

8回裏、日大三は一死から1番金子、2番木代の連打で一死一二塁と、

今日一番のチャンスをつくります。

金足農業はタイムをとり、伝令の工藤がジェスチャー

グランドのナインの緊張をほぐします。

一方、日大三はこのチャンスで3番の日置、

主砲とエースの対決を迎えます。

 

見応えのある勝負でした。

1−3からの5球目、日置はスライダーを強振するも、レフトフライ。

吉田輝星に軍配が上がります。

 

日大三はそれでも二死一三塁のチャンスで4番大塚が、

インコースを詰まりながらも、無理やりレフト前へタイムリー。

2−1、日大三が終盤の驚異的な粘りで、食い下がります。

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スポーツブルより転載



続く二死一二塁、一打同点のチャンスで5番中村、

背番号1同士の対決となります。

追い込まれてもファールで粘る中村、

しかし最後は吉田輝星、変化球で三振を奪い雄叫びをあげます。

秋田の期待を背負う金足農業、驚異の粘りを見せる日大三

この大会を象徴するような大熱戦は、1点差で最終回の攻防を迎えます。

 

4、ただ一人、冷静に

9回表、日大三の井上は3番吉田、4番打川、5番大友の

クリーンアップを三者凡退に抑えます。

特に吉田には140km後半のストレートを連発し、三振に斬ってとり、

度胸満点の投球で味方に勢いをつけます。

 

秋田の悲願か、名門の意地か、試合は最終局面を迎えます。

9回裏、一死から7番飯村の平凡な投ゴロを、

日大三驚異の粘りのプレッシャーからか、金足農業が連携ミス。

出塁を許します。

さらに、代打前田が果敢に初球攻撃、

三遊間の打球を打川が好捕するも、

前田の気迫のヘッドスライディングが一瞬早く、セーフ。

一死一二塁とチャンスをつくります。


【日大三Chance♪】2018年ドラフト候補 吉田(金足農業)投手の投球。準決勝ラストイニング(VS日大三高)

しかし、一人冷静だったのは、一番苦しいはずの吉田輝星でした。

「味方のミスは自分がカバーする」

高ぶるでもなく、恐れるでもなく、

自分の投球を貫きました。

9番柳沢をレフトライナーに打ち取り、

最後は1番金子をセンターフライに打ち取り勝負あり。

大接戦のゲームは、2−1。

地鳴りのような地元の歓声を背に、金足農業が決勝に進出しました。

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朝日新聞より転載



「金農旋風」に敗れたチームの中でも、日大三の粘りは驚異的でした。

スタンド、選手が一体となり、

ゲームセットの瞬間まで何が起きてもおかしくありませんでした。

そして、その粘りを退けた金足農業ナインと吉田輝星。

そして、地元で応援している秋田の人々。

何百万人もの思いが詰まった一球。

甲子園の醍醐味がいっぱいに詰まった、感動の一戦でした。