第100回、2018年夏の甲子園ベストゲーム〜金足農業vs日大三
こんばんは、フサイチです。
今日は「2018夏ベストゲーム、日大三vs金足農業」というテーマで書きたいと思います。
幾多の名勝負を生んだ2018夏の甲子園、第100回大会ですが、
その中で最も暑かった試合は、おそらくこの試合でした。
1、譲れない決勝への切符
「金農旋風」で名門を次々に撃破し、秋田県勢初の決勝をかけた金足農業。
歴史を紐解くと、
1984年夏の甲子園準決勝、快進撃を続け「金農旋風」を巻き起こし、
桑田、清原のKKコンビを擁するPL学園に挑んだのも金足農業でした。
1点リードの8回裏、清原を四球で出し、
続く桑田に逆転ツーラン本塁打を打たれ決勝進出の夢を絶たれました。
あの夏から34年、「金農旋風」再び。
地元秋田の思いを胸に、準決勝に臨みました。
対する西東京代表日大三高、2011年に吉永、横尾、高山らを擁し、
全国制覇を成し遂げて以来の決勝進出を目指しました。
この大会はここまで接戦を制し、勝ち進んできました。
3番の日置航を中心とした強力打線と、ハイレベルな投手陣、
何より終盤で試合をひっくり返す気迫と粘り強さ、
全国で一番長い夏をかけて、準決勝に臨みました。
2、流れを変えた二年生のリリーフ
試合は秋田県民の期待を背負った、金足農業のペースで進みます。
初回に二死二塁から4番打川のレフト前ヒットで先制、
5回には同じく二死二塁から5番大友のセンター前ヒットで追加点、
いずれも出塁したランナーを送りバントで進める、
伝統の金農野球で得点を重ねます。
一方、吉田輝星は初回からアクセル全開、
ランナーを背負っても、粘りの投球で日大三に得点を与えません。
2−0金足農業リードのまま、試合は終盤に入ります。
一死一二塁のチャンスを迎えます。
ここで日大三はここまで好投の河村を諦め、
本格派の二年生右腕、井上広輝(現西武)を投入します。
井上はリリーフ直後にセンター前ヒットを打たれ、一死満塁とされます。
しかし、相手のスクイズ失敗後、2番佐々木を打ち取り、
この絶体絶命のピンチを無失点で切り抜けます。
この井上の好リリーフが、日大三に流れを呼びます。
3、驚異の粘り
8回裏、日大三は一死から1番金子、2番木代の連打で一死一二塁と、
今日一番のチャンスをつくります。
グランドのナインの緊張をほぐします。
一方、日大三はこのチャンスで3番の日置、
主砲とエースの対決を迎えます。
見応えのある勝負でした。
1−3からの5球目、日置はスライダーを強振するも、レフトフライ。
吉田輝星に軍配が上がります。
日大三はそれでも二死一三塁のチャンスで4番大塚が、
2−1、日大三が終盤の驚異的な粘りで、食い下がります。
続く二死一二塁、一打同点のチャンスで5番中村、
背番号1同士の対決となります。
追い込まれてもファールで粘る中村、
しかし最後は吉田輝星、変化球で三振を奪い雄叫びをあげます。
この大会を象徴するような大熱戦は、1点差で最終回の攻防を迎えます。
4、ただ一人、冷静に
9回表、日大三の井上は3番吉田、4番打川、5番大友の
クリーンアップを三者凡退に抑えます。
特に吉田には140km後半のストレートを連発し、三振に斬ってとり、
度胸満点の投球で味方に勢いをつけます。
秋田の悲願か、名門の意地か、試合は最終局面を迎えます。
9回裏、一死から7番飯村の平凡な投ゴロを、
出塁を許します。
さらに、代打前田が果敢に初球攻撃、
三遊間の打球を打川が好捕するも、
前田の気迫のヘッドスライディングが一瞬早く、セーフ。
一死一二塁とチャンスをつくります。
【日大三Chance♪】2018年ドラフト候補 吉田(金足農業)投手の投球。準決勝ラストイニング(VS日大三高)
しかし、一人冷静だったのは、一番苦しいはずの吉田輝星でした。
「味方のミスは自分がカバーする」
高ぶるでもなく、恐れるでもなく、
自分の投球を貫きました。
9番柳沢をレフトライナーに打ち取り、
最後は1番金子をセンターフライに打ち取り勝負あり。
大接戦のゲームは、2−1。
地鳴りのような地元の歓声を背に、金足農業が決勝に進出しました。
「金農旋風」に敗れたチームの中でも、日大三の粘りは驚異的でした。
スタンド、選手が一体となり、
ゲームセットの瞬間まで何が起きてもおかしくありませんでした。
そして、その粘りを退けた金足農業ナインと吉田輝星。
そして、地元で応援している秋田の人々。
何百万人もの思いが詰まった一球。
甲子園の醍醐味がいっぱいに詰まった、感動の一戦でした。