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29才の高校教師です。学校、教育、高校野球について日々の思いを書きます。

”逆転の智弁“の真骨頂〜2018春、智弁和歌山vs創成館

こんばんは、フサイチです。

高校野球センバツがなくなり、地方大会もなくなっています。

一発勝負の夏の大会に賭けるしかありません。

直近のデータは秋の地方大会、あるいは神宮大会に限られます。

他校のデータを取れない反面、手の内をさらさなくていいため、

強豪校有利の夏になりそうです。

コロナ終息が待たれます。

 

さて、今日は今年できなかったセンバツ、近年の名勝負をプレイバックします。

2018年センバツ準々決勝、智弁和歌山創成館戦です。

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サンスポより転載

1、優勝候補同士の激突

智弁和歌山高校(和歌山)はこのブログでも何度か取り上げた通り、強豪校です。

チャンスで流れる「ジョックロック」という曲が魔曲と言われています。

智弁和歌山の野球の特徴は、なんといってもそのバッティングです。

力強いフルスイングから、まるでピンポン球のように打球が飛んでいきます。

劣勢でもその打力で打開し、「逆転の智弁」と呼ばれています。

そして、本格派右腕のエースの平田も前評判通りの好投を見せていました。

今大会は、富山商(富山)に4−2、国学院栃木(栃木)に7−4と、

危なげなくここまで勝ち進みました。

 

一方創成館(長崎)は4年ぶり3度目と実績では劣ります。

しかし、「今大会の創成館は力がある」という評判が記事やサイトが多くありました。

秋の九州王者で、今大会優勝候補に挙げられている大型チームです。

エースの190cm左腕の川原(現阪神)と智弁和歌山に劣らぬ強打が魅力のチームです。

初戦の下関国際(山口)に3−1、

次戦の智弁学園(奈良)に2−1と、接戦をモノにしてきました。

実力のある、優勝候補同士の準々決勝は、壮絶な試合となりました。

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朝日デジタルより転載

2、壮絶な打ち合い

試合前の下馬評では智弁和歌山有利、

やはり過去の実績に加え、打線の厚みが桁違いです。

特に3番の林晃汰選手(現広島)は今大会屈指のスラッガーです。

しかし、先制は創成館でした。

智弁和歌山の先発小堀を攻め、初回に3点を奪います。

智弁和歌山も、2回に黒川(2年、現楽天)、3回には林が、

それぞれ逆方向に本塁打を放ち、反撃します。

しかし九州王者、創成館の前に一度も追いつけないまま5回までで7−6、

試合は激しい点の取り合い、乱打戦の殴り合いになります。

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朝日新聞デジタルより転載

3、拙攻

創成館は5回途中から、智弁和歌山は6回からエースにスイッチ、

実力のある投手同士、エースの投げ合いとなります。

それでも試合は落ち着きません。

7回に創成館が2点を奪うと、智弁和歌山もその裏に1点を返します。

観客もこの優勝候補同士の、ノーガードの殴り合いにボルテージが上がります。

9−7で迎えた8回裏、智弁和歌山は先頭の1番神先がセンター前ヒットで出塁します。

2点差の8回、無死一塁で2番西川、器用な打者です。

この勝負を決める局面でどう攻めるか、智弁和歌山の攻撃に注目が集りました。

しかし、西川は初球を簡単に打ち、サードゴロダブルプレー

チャンスの目は一瞬で摘まれました。

 

「このプレーで勝負アリだ」

 

そう思いました。

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サンスポより転載

4、エースの意地

スコア変わらず9−7で迎えた9回裏、

智弁和歌山は先頭の4番文元がヒットを放ち、再び先頭打者を出します。

5番冨田は三振に倒れるも、6番黒川は四球、一死一二塁とします。

7番根来は痛烈な当たりもピッチャー正面へのゴロ、二死一三塁と追い込まれます。

8番吾妻は追い込まれるも、粘りを見せ、執念の四球、二死満塁となります。

 

そして、打順は9番、エースの平田に回ります。

 

全員で粘り、繋いだこのチャンス。そして、

エースとして相手の勢いを止めることができなかった不甲斐なさ、

様々な思いを背負い、打席に立ちます。

 

0−1からの2球目、高めを思い切り叩き打球は三遊間へ。

レフト前2点タイムリーで9−9、試合を振り出しに戻します。

 

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気迫のガッツポーズ!

見応えのある勝負でした。

直前で2塁走者に代走を出した高嶋采配も光りました。

創成館はエース川原を諦め、酒井にスイッチ。後続を抑え延長に入ります。

 

5、激闘の果てに

創成館は10回、一死から5番野口が今日5本目のヒットで出塁。

盗塁と暴投で一死三塁とし、6番鳥飼の犠牲フライで勝ち越します。

10−9。

 

「さすがに今度こそ勝負アリ」

 

長かった試合も終わりに近づいてきました。

 

智弁和歌山は10回裏、先頭の西川が死球で出塁します。

ここでも四死球が絡んできます。

しかし、酒井は気持ちのこもった投球で林を三振、

文元をピッチャーゴロに仕留め、二死までこぎつけます。

再び追い込まれた智弁、しかし5番冨田は冷静に四球を選び二死一二塁とします。

このクライマックスで、バッターは6番黒川。

 

創成館にとってはあとアウト一つ、4回目の「あと一人」です。

2−1と追い込んでからの4球目でした。

チェンジアップを捉えた打球はレフト後方へ。

レフトは左打者の切れて伸びていくいく打球に追いつけず、

頭を越されます。

この間に2塁走者、1塁走者が帰り、逆転サヨナラ。

試合は黒川の劇的な一打で11−10、智弁和歌山が勝ちました。

 

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そこまで1回も相手にリードを許していなかった創成館でしたが、

9、10回の四死球が痛かったです。

勝ちを急ぎ、慎重になりすぎたんでしょうか。

一方で、智弁和歌山は劣勢からの驚異の粘り、

ワンサイドゲームになりそうな場面は何度もありましたが、

さすがに逆境に強い。「逆転の智弁」の真骨頂を見せました。

 

激闘の果てに、とんでもないドラマが待っていました。