”逆転の智弁“の真骨頂〜2018春、智弁和歌山vs創成館
こんばんは、フサイチです。
一発勝負の夏の大会に賭けるしかありません。
直近のデータは秋の地方大会、あるいは神宮大会に限られます。
他校のデータを取れない反面、手の内をさらさなくていいため、
強豪校有利の夏になりそうです。
コロナ終息が待たれます。
さて、今日は今年できなかったセンバツ、近年の名勝負をプレイバックします。
1、優勝候補同士の激突
智弁和歌山高校(和歌山)はこのブログでも何度か取り上げた通り、強豪校です。
チャンスで流れる「ジョックロック」という曲が魔曲と言われています。
智弁和歌山の野球の特徴は、なんといってもそのバッティングです。
力強いフルスイングから、まるでピンポン球のように打球が飛んでいきます。
劣勢でもその打力で打開し、「逆転の智弁」と呼ばれています。
そして、本格派右腕のエースの平田も前評判通りの好投を見せていました。
今大会は、富山商(富山)に4−2、国学院栃木(栃木)に7−4と、
危なげなくここまで勝ち進みました。
一方創成館(長崎)は4年ぶり3度目と実績では劣ります。
しかし、「今大会の創成館は力がある」という評判が記事やサイトが多くありました。
秋の九州王者で、今大会優勝候補に挙げられている大型チームです。
エースの190cm左腕の川原(現阪神)と智弁和歌山に劣らぬ強打が魅力のチームです。
初戦の下関国際(山口)に3−1、
次戦の智弁学園(奈良)に2−1と、接戦をモノにしてきました。
実力のある、優勝候補同士の準々決勝は、壮絶な試合となりました。
2、壮絶な打ち合い
試合前の下馬評では智弁和歌山有利、
やはり過去の実績に加え、打線の厚みが桁違いです。
特に3番の林晃汰選手(現広島)は今大会屈指のスラッガーです。
しかし、先制は創成館でした。
智弁和歌山の先発小堀を攻め、初回に3点を奪います。
それぞれ逆方向に本塁打を放ち、反撃します。
しかし九州王者、創成館の前に一度も追いつけないまま5回までで7−6、
試合は激しい点の取り合い、乱打戦の殴り合いになります。
3、拙攻
創成館は5回途中から、智弁和歌山は6回からエースにスイッチ、
実力のある投手同士、エースの投げ合いとなります。
それでも試合は落ち着きません。
7回に創成館が2点を奪うと、智弁和歌山もその裏に1点を返します。
観客もこの優勝候補同士の、ノーガードの殴り合いにボルテージが上がります。
9−7で迎えた8回裏、智弁和歌山は先頭の1番神先がセンター前ヒットで出塁します。
2点差の8回、無死一塁で2番西川、器用な打者です。
この勝負を決める局面でどう攻めるか、智弁和歌山の攻撃に注目が集りました。
しかし、西川は初球を簡単に打ち、サードゴロダブルプレー。
チャンスの目は一瞬で摘まれました。
「このプレーで勝負アリだ」
そう思いました。
4、エースの意地
スコア変わらず9−7で迎えた9回裏、
智弁和歌山は先頭の4番文元がヒットを放ち、再び先頭打者を出します。
5番冨田は三振に倒れるも、6番黒川は四球、一死一二塁とします。
7番根来は痛烈な当たりもピッチャー正面へのゴロ、二死一三塁と追い込まれます。
8番吾妻は追い込まれるも、粘りを見せ、執念の四球、二死満塁となります。
そして、打順は9番、エースの平田に回ります。
全員で粘り、繋いだこのチャンス。そして、
エースとして相手の勢いを止めることができなかった不甲斐なさ、
様々な思いを背負い、打席に立ちます。
0−1からの2球目、高めを思い切り叩き打球は三遊間へ。
レフト前2点タイムリーで9−9、試合を振り出しに戻します。
気迫のガッツポーズ!
見応えのある勝負でした。
直前で2塁走者に代走を出した高嶋采配も光りました。
創成館はエース川原を諦め、酒井にスイッチ。後続を抑え延長に入ります。
5、激闘の果てに
創成館は10回、一死から5番野口が今日5本目のヒットで出塁。
盗塁と暴投で一死三塁とし、6番鳥飼の犠牲フライで勝ち越します。
10−9。
「さすがに今度こそ勝負アリ」
長かった試合も終わりに近づいてきました。
ここでも四死球が絡んできます。
しかし、酒井は気持ちのこもった投球で林を三振、
文元をピッチャーゴロに仕留め、二死までこぎつけます。
再び追い込まれた智弁、しかし5番冨田は冷静に四球を選び二死一二塁とします。
このクライマックスで、バッターは6番黒川。
創成館にとってはあとアウト一つ、4回目の「あと一人」です。
2−1と追い込んでからの4球目でした。
チェンジアップを捉えた打球はレフト後方へ。
レフトは左打者の切れて伸びていくいく打球に追いつけず、
頭を越されます。
この間に2塁走者、1塁走者が帰り、逆転サヨナラ。
試合は黒川の劇的な一打で11−10、智弁和歌山が勝ちました。
そこまで1回も相手にリードを許していなかった創成館でしたが、
9、10回の四死球が痛かったです。
勝ちを急ぎ、慎重になりすぎたんでしょうか。
一方で、智弁和歌山は劣勢からの驚異の粘り、
ワンサイドゲームになりそうな場面は何度もありましたが、
さすがに逆境に強い。「逆転の智弁」の真骨頂を見せました。
激闘の果てに、とんでもないドラマが待っていました。