「9回二死走者なし」からの王者の猛追〜日本一アツい大阪の夏
こんばんは、フサイチです。
昨日は2018年夏の甲子園、
金足農業の劇的なサヨナラツーランスクイズについて書きました。
地方大会の一戦を書きます。
1、高校野球史上最強チーム
大阪の野球は強豪校揃いですが、大阪桐蔭と履正社は別格です。
近年はこの両校のどちらかが全国制覇という、とんでもない現象が起きています。
しかも2017年春の選抜は、甲子園の決勝でこの二校が戦ったんです。
すごいでしょ?笑
そして2018年夏、地区予選準決勝で両校が対戦します。
下馬評では春の日本一大阪桐蔭が有利。
まず日本一の投手が二人、大阪桐蔭にいます。(※この時点でチート)
一人は柿木蓮(現日ハム)、150キロ右腕です。
コントロールも良く、昨夏も経験した豪腕です。
そして、三刀流の根尾昂(現中日)こちらも150キロ右腕。
ショート、外野も守るこの年No. 1の注目選手です。
さらに4番センターの藤原恭大(現ロッテ)は走攻守揃ったパワーヒッター。
さらにさらに中川、山田、宮崎、青地、小泉、横川(現巨人)・・・
リアルに全員が注目選手です。笑
決して履正社に力がないわけではありません。
しかし、この年の大阪桐蔭は高校野球史上でも1、2を争うチームであり、
力の差は確かにありました。
2、履正社の秘策
普通にやっても勝てないと踏んだ履正社の名将、岡田監督。
奇策に出ます。監督いわく「監督人生の中で1番の大博打」です。
それが、
「3番ピッチャー濱内」
です。
ザワザワと、場内がどよめきます。
実は彼、ピッチャーじゃないんです。
背番号は9番、外野を守っているキャプテンです。
もちろんこの夏初登板。ピッチャーの練習もほとんどしていません。
これには流石の大阪桐蔭もびっくり!
「エースちゃうんかい!」
となるはずでした。
しかし、なんと大阪桐蔭側もこの濱内先発を予想していたそうです。
前の試合、ブルペンで濱内が投球練習していたのを見て、
「これは濱内がピッチャー、あるかもしれない」
と感じていたそうです。
両チームの感性、やっぱり全国で勝つチームは違うと思わざるを得ません。
3、追い詰められた王者
試合は3−1で大阪桐蔭がリードし、終盤に入ります。
8回裏、ここで履正社は驚異の粘りを見せます。1、2番の連打で1点を返すと、
3番濱内の内野ゴロの間に同点に追いつきます。
さらに履正社は5番、当時1年生の小深田が出塁し、
続く6番井上広大(現阪神)が左中間へタイムリー三塁打を放ち、
逆転します。もうこの時には、履正社の大歓声が凄かったです。
球場にいるほとんどの人が大声で叫びまくっている様子が分かります。
追い詰められた王者、大阪桐蔭は先頭の代打俵藤がセンター前ヒット、
のぞみをつなぎます。春夏連覇に向けて、ここで負けるわけにはいきません。
続く1番石川は初球からバントを試みます。
しかし、これが三塁手前の小フライとなってしまいます。
飛び出した1塁ランナーも戻れず痛恨のダブルプレー。
二死走者無しとなります。
「高校野球史上最強チーム、万事休す」
誰もがそう思いました。
あとアウト一つまで追い詰めました。
しかしこの壮絶な試合は、ここからがクライマックスでした。
4、王者の猛追
2番宮崎に対し慎重になりすぎたか、濱内は四球を許します。
球場は怒号にも似た声援が飛び交います。大阪の夏は本当に熱い!
投手の練習をしていない濱内は、一度マウンドを降りているとはいえ、疲れもピーク。
それでもキャプテン対決となった3番中川を、2−3と追い込みます。
ここで中川の打った打球はレフト線にフラフラと上がるファールフライとなります。
後に濱内が、
「これで勝ったと思ってしまった」
と振り返った打球は、風がボールを運びファールになります。
結局、次の球を中川が選び四球となります。
4番藤原に対して、濱内は投げるたびにバランスを崩します。もう限界でした。
追い込みながらも四球。3者連続フォアボールとなります。
続く5番根尾には、もはやストライクが入りません。
ストレートの四球を与え、なんと4者連続フォアボール、同点となりました。
履正社にとってそこまで見えていた勝利が、目前ですり抜けて行きました。
場内は歓声に沸きながらも、
9回二死走者無しからの4者連続フォアボールに、
「信じられない…」
というような、なんとも言えない雰囲気になっていました。
なによりボロボロの濱内、キャプテンとして毅然としたその態度、
見ていると涙が出てきます。
息をつく間も無く6番山田の2点タイムリーで勝ち越します。
結局そのままゲームセットで6−4。
奇襲の履正社キャプテン濱内は力投も、あとアウト一つで力尽きました。
一方の大阪桐蔭はこの勢いそのままに、春夏連覇を成し遂げます。
甲子園も含め、大阪桐蔭が最も苦しんだのは、この履正社戦でした。
5、野球は9回ツーアウトから
よく野球は9回ツーアウトからと言われます。
まさにそんな展開でした。
球史に残る大逆転劇でした。
この悔しさを経験した履正社の下級生、井上や小深田は、
翌年2019年に夏の甲子園で全国制覇を成し遂げます。
悔しい思いが人を成長させる。
濱内投手も、きっと明るい未来が待っていると思います!