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29才の高校教師です。学校、教育、高校野球について日々の思いを書きます。

笑顔の大エース〜星稜・奥川恭伸のかっこよさ

こんばんは、フサイチです。

夏の甲子園開催について、連日ニュースになっていますね。

開催してほしいという意見も多く、高校野球ファンが多いことを、

嬉しく思います。

 

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スポニチより転載

今日は、2019年夏の甲子園を沸かせた選手を取り上げます。

星稜高校、奥川恭伸投手です。

 


準優勝校、星稜のエースであり、数々の名勝負を生んだ投手です。

歴史に残る試合を取り上げ、見ていきます。

 

1、悔いの残る二年夏の降板

奥川投手は、かつて松井秀喜が在籍した名門、

星稜高校で1年春からベンチ入りした期待のルーキーでした。

1年秋から主戦として登板し、2年センバツでは甲子園で144km、

2勝をあげる活躍を見せました。

2年夏の甲子園では開幕戦で先発。150kmを計測し、一躍注目選手となりました。

迎えた2回戦は済美(愛媛)と対戦します。

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デイリースポーツより転載


奥川は4回まで1失点に抑え、6−1と大量リードを奪う展開、

しかし、奥側はその4回に足をつり、マウンドを降りました。

大事を取っての交代でしたが、降板後試合は暗転します。

最大6点あった点差を逆転され、タイブレークの末、

相手の逆転サヨナラ満塁ホームランにより、星稜は大逆転負けを喫しました。

奥川は「自分が最後まで投げていればあんな展開にならなかった」

と、足をつり降板したことを悔いました。

この苦い経験により、奥川はさらなる成長を見せます。

 

2、世代No. 1投手とセンバツ

その後、高校日本代表に二年生で唯一選ばれ、

秋の北信越大会では10連続奪三振を記録します。

星稜は捕手の山瀬や強打者を擁し、この年の日本一に最も近いチームに、

奥川は名実ともに、文句なしの世代No. 1投手として、

全国に名を轟かせました。

そして迎えたセンバツ、初戦の相手は同じく優勝候補の履正社(大阪)となり、

1回戦屈指の好カードとなりました。

しかし、結果は奥川が17奪三振完封、3−0で星稜の圧勝でした。

 

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産経ニュースより転載

このまま優勝まで駆け上るかに見えましたが、

次の習志野戦に落とし穴が待っていました。

奥川は本調子とは程遠い内容で、7安打を打たれ3失点。

サイン盗み疑惑など、打者との対戦以外でもリズムを狂わされ、

3−1で、まさかの敗戦を喫します。

習志野もこのセンバツ準優勝と実力のあるチームですが、

ダントツの優勝候補だった星稜としては、悔いの残る敗戦となりました。

 

3、集大成の夏

数々の悔しさを糧に成長し、奥川恭伸は集大成の夏を迎えます。

地方大会では158kmを記録し、貫禄の投球。

他を寄せ付けず甲子園出場を決めます。

この夏も優勝候補として君臨し、甲子園に乗り込みました。

 

初戦の旭川大(北北海道)戦では、二塁を踏ませぬ投球を見せます。

1−0で3安打完封勝ちを収めます。

2回戦の立命館宇治(京都)戦でもリリーフで登板し、無失点の好投。

そして、3回戦で同じく優勝候補の智弁和歌山(和歌山)戦を迎えます。

奥川は今大会一番の投球を見せます。

2回から6者連続奪三振を奪うなど、圧巻の投球を見せます。

6回に味方のエラーから1点を失うものの、

強力打線を相手に9回までわずか3安打に抑えます。

一方、智弁和歌山も堅い守りで1−1のまま延長に入ります。

延長に入り、奥川は足をつります。

昨夏の悔しい思いが頭によぎったと言います。

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毎日新聞より転載

しかし、降板はしません。

12回にはその状態で3者連続三振を奪い、タイブレークに突入。

無死一、二塁から始まる守備を2イニング無失点に抑え、

味方の劇的なサヨナラホームランによる勝利を収めました。

足をつりながら14回を投げ抜いた奥川、23奪三振

自責点0と歴史に残る快投を見せ、劇的な勝利となりました。

 

その後も星稜は順調に勝ち進み、決勝戦に進みます。

奥川は決勝まで自責点0、防御率0.00と圧巻の投球でした。

夏の甲子園で1点も取られていない状態で迎える決勝、

相手はセンバツで勝利した履正社(大阪)です。

履正社は17奪三振を奪われたセンバツから、打倒奥川を掲げ、

バッティングを磨いてきました。

奥川は連投の疲れもあり、本来の投球ができません。

井上広大にスリーランホームランを浴びるなど、5失点。

試合も5−3で敗れ、全国制覇は成りませんでした。

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Baseball Gateより転載

奥川投手の魅力は、笑顔です。

ピンチでもニコニコ、試合を楽しむように投げる姿は、

見ている人間を引き込みます。まさに、笑顔の大エースです。

高校野球は辛い顔して、我慢」

という概念を崩す選手ですね!

 

そして、逆転サヨナラ満塁ホームラン、サイン盗み疑惑、

延長14回の激闘など、常に高校野球の名勝負に絡む選手でした。

そういう星のもとに生まれているんでしょう。

 

吉田輝星や松井裕樹とは違うかっこよさと言えます。

ピンチにも笑えるぐらい、厳しい練習にも耐えてきた証拠です。

人間的な強さを持った、天才投手でした。