Babysteps

29才の高校教師です。学校、教育、高校野球について日々の思いを書きます。

島人の夢〜2010興南高校春夏連覇に見る“野球の力”

こんばんは、フサイチです。

今日初めてZOOMで会議をしました。

すごい!いろんな機能があるし、もっともっと教育に活かせる方法を

模索していきたいです。

 

今日は「島人の夢〜2010興南高校春夏連覇に見る“野球の力”」

というテーマで書きたいと思います。

 

高校生の、9人の野球のプレーで、

これだけ多くの人間を感動させることができるんだ。

野球の力、若い力の奇跡をできるかぎり言葉にしたいと思います。

f:id:youkokurama:20200412210425j:plain

沖縄タイムス社より転載

1、地元の期待

沖縄の甲子園の歴史は、苦難の歴史と言えます。

沖縄勢の甲子園初参加は1958年、当時はまだ米軍統治下でした。

植物防疫法により甲子園の土を沖縄本土に持ち帰ることができず、

那覇港への上陸目前の海に捨てたというエピソードもあります。

 

そして10年後の1968年、

興南高校監督の我喜屋監督が主将として出場した沖縄の興南高校

当時、沖縄県勢は春夏通じて、甲子園で1勝しかしていませんでした。

興南は、県勢「1勝の壁」を見事突破し、

一気にベスト4へと躍進します。「興南旋風」です。

しかし、インタビューでは「授業は英語ですか」と質問されるなど、

沖縄はまだまだ、日本から離れた存在でしたが、

沖縄野球の実力を、甲子園で見せつけました。

 

その後、1990、91年に沖縄水産が夏準優勝、

1999年には同じく沖縄水産センバツ優勝と、

沖縄県勢は時代とともに甲子園を席巻します。

 

しかしただ一つ、夏の「真紅の大旗」だけは、

海を越えることがありませんでした。

夏の全国制覇は50年以上、沖縄県勢の悲願でした。

f:id:youkokurama:20200412210702j:plain

スポーツブルより転載

2、島人の夢かなう

2010年、トルネード投法の島袋(元ソフトバンク)という圧倒的なエース、

我如古、真栄平、国吉といった破壊力抜群の打線、

名将、我喜屋監督率いる興南は、春の甲子園に登場し強豪校を次々と撃破、

決勝で日大三(東京)を延長で下し、センバツを制しました。

 

圧倒的な戦力は「高校野球史上最高のチーム」とまで言われました。

当然、夏の甲子園にもダントツの優勝候補として登場します。

そして、沖縄県民の悲願、夏の全国制覇という期待もありました。

沖縄では他県とは違い、県勢の試合になると街から人が消えます。

皆店を閉め、テレビの前で甲子園応援をするためです。

そんな沖縄県民の期待を一身に背負いながら、

それでも我如古主将は、

夏の甲子園で優勝することが本当の目標」

と、 揺らぐことなく春夏連覇を目指しました。

 

順調に勝ち進む興南の最大のピンチは、準決勝の報徳学園(兵庫)戦でした。

センバツベスト4の報徳は疲れが見える島袋を攻め、

2回までに5点をリードする一方的な展開となります。

しかし、5回のエース島袋のヒットを口火に、ホームラン攻勢ではなく、

後ろにつなぐ全員野球を展開します。

5本のタイムリーを重ね、見事6−5で逆転勝ちを収めます。

決勝の相手はプロ注目、一二三投手(元阪神)を擁する東海大相模(神奈川)ですが、

好投手相手に、序盤から打線が爆発しました。

13−1で勝利し、夏の全国制覇、上6校目の春夏連覇を成し遂げました。

沖縄の悲願、島人の夢が叶った瞬間です。

沖縄県民の期待と応援は、他県とは明らかに異質でした。

興南カラーのオレンジ一色のスタンドは甲子園の観客席を、

ほぼ全て埋め尽くしました。 指笛での応援、「ハイサイおじさん」など、

特色のある応援は、その年の甲子園の象徴でした。

 「沖縄県民で勝ち取った優勝」という我如古の言葉通り、

優勝の瞬間、沖縄県民は涙を流し喜びに暮れ、

口々に「ありがとう」、「彼らは沖縄県の誇り」と言いました。

f:id:youkokurama:20200412211315j:plain

朝日新聞より転載

3、あとひとつ

この年の熱闘甲子園のテーマソングは、

 FUNKY MONKEY BABYSの「あとひとつ」でした。

その中でこんな歌詞があります。

 

”あと一粒の涙で 一言の勇気で

願いが叶う その時が来るって

僕は信じてるから 君も諦めないで

何度でもこの両手を この空へ“

 

まさに沖縄県勢が、そして沖縄県民が、

何度も何度も逆境に立たされ、

それでも「あとひとつ」と諦めず、

信じて追いかけつづけ、叶えた夢でした。

 

「たった9人の、18歳の高校生のプレーで、こんな感動が生まれるんだ」

「同じ土地で生きている、じっちゃんばっちゃんの声援で、

高校生はこんな信じられない力を発揮できるんだ」

「野球には、こんなに人を動かす力があるんだ」

野球の力、無限の可能性を、感じずにはいられないフサイチでした。

f:id:youkokurama:20200412210609j:plain

興南高校HPより転載